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ルーズソックス

手術した父が寒いという。

特に足が寒いという。

靴下が必要だという。

私は靴下を買ってきた。

白くて長くてふっくらとした靴下を買ってきた。

それはたぶん、都会の女学生がはいているルーズソックスというものである。

それはたぶん、田舎の女学生には校則で禁止されている白物である。

父はそれがとても気に入ったようだ。

しかし看護婦さん達には、評判が悪いかもしれない。

変態じいさんみたいに見えるかもしれない。

しかし、常識だとかなんだとか知ったことではない。

それが目的にかなっていれば、良いのである。

父は、常識だとか世間の評判をあまり気にしないのである。

もっとも、

父には、ルーズソックスがいかなる代物であるかの知識は全然ないのだった。