''' 前向きの怪談 '''

しかるに、美しい国、日本の、美しい言葉、日本語は、未来に背を向け、
過去の亡霊の方に向き合っています。
儒教精神と先祖崇拝の教えに引率され続けています。
たとえば、
「前年」という言葉があります。視線の前方向には過去があります。
「後年」で表現する未来は、背中の方角にあります。
人は時間の流れの中を後ろ向きに歩むのです。
前と後ろの意味には、もっと前向きに進める解釈があるはずです。

前方には先輩がいます。御先祖がいます。キリストが、仏陀がいます。
はるか前方の彼方には類人猿が行進しております。
後ろには、後輩が、子孫が続きます。
未来は、後ろに続く子孫たちのものなのです。
葬式会場へ向かう行列があります。
前を見ると何やら何かをつまんで顔に近づけています。
前例に従い、御香をつまんで「ご愁傷様」と言うべきところを、
御新香だと思って「ご馳走様」と言って口に入れてしまいます。
かくのごとく伝統行列や形骸化した宗教儀式は訳の分からないものになって行くのです。