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胴長犬近況

 最近の出来事。相変わらず何の事件もありません。隣の煩いダックスフンドは、以前より、だいぶ静かになりました。朝は少々、夕方になると本格的に喚き始めます。
 動物の権利とは、動物を動物たらしめている動き回る自由と、種として進化に必要な恋愛の自由であると、私は考える次第でありますが、その両方とも人間によって妨害されております。人間の飽く事のない食欲や支配欲や愛情欲求のために囚われ、不自然に飼育されています。隣の小さい犬は玄関先で鎖に繋がれております。これ、もしも人間の女の子をどこかで調達して来て玄関先に鎖で繋いでいたらと考えると、とんでもないことです。敷地は治外法権で守られております。朝な夕な悲鳴を聞きながら、いかんともしがたいのはストレスの元凶です。何が原因かは不明ですが、おめでたい記念金貨禿げが出来てしまい禿げの周辺ごそっと銀髪になってしまいました。
 昔の犬はそれなりに奴隷生活に満足して、延々と不平不満を叫び続けるようなことはありませんでした。人間が犬の自然な婚姻に介入して不自然に繁殖養育した結果、想像を絶する犬が出現したのです。延々と何時間も悲鳴を上げ続ける犬、その脅威は実際に経験してみないとわかりません。
 昔の犬は奴隷の境遇でも、それなりに満足そうに暮らしていたものです。彼ら日本の伝統的な番犬は自然と禅宗の境地に達していたのでしょう。キリスト教国から連れてこられた胴長犬は、似たような顔つきの上流階級の女優様に幸福の象徴のように宣伝されました。この犬の向上心と信仰心は、とてつもなく高いのです。ご主人を想い、念仏を唱えれば、唱え続ければ、必ず良いことが起きるという信念がはんぱないのです。
 自由に動き回れる野良犬ならば、不平不満を喚き散らしてなどいないで、食い物を探して托鉢に回るのですが、鎖で繋がれた犬は泣き言を言う他にする仕事がありません。
 犬の不平不満のつぶやきは強大です。「サトラレ」みたいです。サトラレとは本人の自覚なく周辺の人々に現実的な幻聴を生起させる能力者のことです。統合失調症の考想察知妄想から発明されたトンでもない概念です。隣家の犬の絶え間ない叫びは、統合失調症者に襲い掛かる幻聴と同様の威力があるのです。
 専門家の意見では、このような犬を躾けて、より良い待遇を望むのを諦めさせ黙らせるには、徹底して無視することだそうです。しかし、可愛い犬に愛されることを渇望している飼い主には難しいことです。近隣住民が可愛そうな犬のことを心配して様子を見に行くのもよろしくないと思われます。幻聴には、いっさい相手にしないのが良いのです。
 犬から遠い部屋に寝室を変更しました。その過程で、ごみ、記念品を沢山捨てました。それらに対する執着を捨てました。ごみをカメラに撮ってパソコンに保存しました。