戻る◀

同窓会

 11月5日に中学校の同窓会に行きました。このクラスはだいたい3年間隔で開催しています。今回は50周年記念だそうです。私はいつも欠席しているのですが、今回、試しに出席してみました。欠席理由は単純に会費が高いことです。前回、幹事が電話してきた時に文句を言ってみました。すると今回は、1万円だったのを8000円に値下げしました。まだまだ桁違いに高いです。私の個人的な金銭倫理感覚では一日の食費は600円未満でないとよろしくありません。中学生の頃は毎日全員集合していてしかも無料だったじゃないですか。なぜ今それができないのか? それは、同窓会というものが、現在どれほどのお金持ちに成って幸福に暮らしているかということの発表会であるからです。食べきれない程のご馳走を並べておいて合法麻薬を酌み交わして楽しく交流するのです。会費を払いたくないレベルの貧乏人は気まずくなるから来ないで下さいという仕組みに為っています。
 以前送付されてきた同窓会の集合写真を見て、どのような服装をすれば、目立たないかを考慮し、着た事のないような服を引っ張り出して色々と考えました。靴は困ったことにまともな物がありません。昔、葬式の時に使っていた革靴は底が崩壊しかけていた結果、謎の点々汚染で式場に迷惑をかけたので捨ててしまいました。こんな時のためにホームセンターで買っておいた履物がありました。「おぼっちゃまくん」の正装のように、前から見ると革靴のように見える代物ですが後ろから見るとスリッパです。1000円だったので買いました。人列の後方を歩けば、たぶんバレないでしょう。
 自転車か原付か迷いましたが原付バイクで行きました。立派な会場に着くと、ぐるぐる回っても困ったことに駐輪場がどこにもありません。2輪車で来るような人間を想定していない施設です。入口近くに止めるとものすごく場違いに見えるので、遠くのほうの道端に置きました。建物に入って行くと、たぶん同級生たちが歓談していました。適当に生返事をしつつ、受付に同級生だと思える笑顔の女性がいましたので、支払いをして資料を受け取り、席順のくじ引きをします。みんなめちゃくちゃ笑顔なので、ついつい、釣られて笑顔になりそうになります。これはよろしくない。私は人に会うときは出来るだけ笑わないように努力しています。そのわけは、私は倹約家なので歯医者に行ったことがありません。それで下は揃っていますが上の前歯が半分ぐらい抜けています。うっかり口を開けて笑ってしまうと、ものすごく間抜けな顔つきになってしまうのです。
 出来るだけ目立たないようにやり過ごそうと思っていたのですが、くじ引きで決まった席は、前に教育委員長も歴任された偉大な先生がいます。左隣は裁判官になった人で、右隣は見たところ一番の美人で飛び切り笑顔の女性です。女性達は全員、私の記憶にありませんし、男性達もほとんど誰が誰だか分かりません。私は過去を反省しないので記憶にほとんど何も残っていません。人間関係能力が高い東京から来た幹事が上手に司会します。私は顔も名前も覚えていませんが彼は子供時分に私の家にも来たことがあるそうです。
 最初に先生がお話しをします。様々な同窓会のデータベースから分析した棒グラフを提示して、将来の予測を発表します。次に大企業で出世している親友だった同級生が、舞台上で能の「竹生島」という演目を朗々と紋付き袴で披露しました。彼は理想的人生です。綺麗な家、綺麗な奥さん、国際的な人脈、医者の優秀なご子息・・・。一方、私の人生で達成したことと言えば、物凄く孤独で貧乏な暮らしをしていても平気なことぐらいです。
 隣の裁判官が、むやみやたらと話かけてきます。私のホームページをたまに見るそうです。どうやら私の名前をインターネット検索すると最初のほうに出現するので、私がひとかどの人物なのだと勘違いしているみたいです。